
高温、低PHなどの条件で変性した蛋白質を生理的条件下に戻すと、速やかに各蛋白質固有の天然構造に巻き戻ることは以前からよく知られている。しかし、どのようにして蛋白質はランダムな変性構造から秩序だった天然構造へ速やかに巻き戻るのか、しかも、その長さにもかかわらず絡まることなく一つの構造に巻き戻るのはなぜか、そのメカニズムはまだ十分に明らかになっていない。この「蛋白質の巻き戻り過程」について、粗視化モデルやAMBER、CHARMMなどの全原子モデルを用いたシミュレーションにより研究している。
さらに、アミロイド形成に関する研究も行っている。BSEの原因であるプリオンは、αへリックスからなる天然構造がα→β構造転移を起こしアミロイドを形成するのはよく知られている。しかし、二次構造をもたない非常に短いペプチドでもアミロイドを形成するものがあるなど、最新の研究は様々なアミロイド形成機構があることを示唆している。我々は蛋白質巻き戻り過程の研究を基に、アミロイドを形成する蛋白やペプチドを研究し、アミロイド形成機構の解明を目指している。

1) Kameda,T. “Importance of sequence specificity for predicting protein folding pathways: perturbed Gaussian chain model”Proteins: Structure, Function, and Genetics 53:616-28(2003)
2) 亀田倫史,高田彰二,環境によって誘起される蛋白質の二次構造:レプリカ交換法によるサンプリング,第41回日本生物物理学会年会,新潟,2003年9月
3) 亀田倫史,高田彰二,ペプチド二次構造形成傾向の環境依存性,第3回日本蛋白質科学会年会,札幌,2003年6月
4) 亀田倫史,フォールディング経路の予測に関するアミノ酸残基情報の重要性:Perturbed Gaussian Chain Model,第2回日本蛋白質科学会年会,名古屋,2002年6月
5) 亀田倫史,フォールディング経路の予測に関するアミノ酸残基情報の重要性:Perturbed Gaussian Chain Model,第40回日本生物物理学会年会,名古屋,2001年11月
6) Tomoshi Kameda, ”Folding Study of Perturbed Gaussian Chain Model”, 4th International Conference on Biological Physics, Kyoto, Aug. 2001
|