
予測対象タンパク質と構造既知タンパク質の類似性検証は、立体構造推定の根幹をなす作業である。非常に強力な類似配列検索手法であるPSI-BLASTは、局所配列比較法を予測配列についてのプロファイルと逐次的に組み合わせることで配列情報を有効に活用し、ペアワイズの配列比較法をはるかに凌ぐ類似性検証を可能にした。ここでプロファイルとは、相同であると推測される類似配列群での各残基位置における20種類のアミノ酸出現頻度をスコア化したものであり、一般に配列データの増大につれてその信頼度も上昇し、予測結果の質、量も共に向上するものと考えられる。この意味で、近年のゲノム配列データの急激な蓄積は、計算機による自動的な構造/機能の推定、あるいは予測の必要性を増大させるだけでなく、実は、計算機を用いた配列情報からのタンパク質立体構造予測に恩恵をもたらしている。
ここ数年、より効果的な配列情報の活用のために、予測対象タンパク質と構造既知タンパク質の両方についてのプロファイルを作成し比較を行うプロファイル比較と呼ばれる手法が盛んになってきている。我々は、新たな類似性尺度のプロファイル比較への導入と大量配列情報の有効利用により予測可能範囲の拡大とアラインメント精度の改良を目指し、新たに立体構造予測システムFORTE1を開発した。FORTE1では、予測配列、構造既知タンパク質の配列の両方について、PSI-BLASTを利用して作成される配列プロファイルが用いられている。プロファイル作成には、構造情報を考慮するなど様々な方法が提案されているが、FORTE1では大量配列情報を非常に有効に利用することで、プロファイル作成に幾多の工夫を凝らすことなく、またそれほど時間をかけることなく、他手法以上の結果も得られている。現在6千余の既知構造ライブラリの配列プロファイルは、大規模PCクラスタを利用して迅速に準備される。
参考文献
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for protein fold recognition. submitted

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