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遺伝子ネットワークの構造推定のための非線形最適化法

研究内容
 生命現象の基本単位である細胞のしくみと働きを理解する領域として、近年、システ ム・バイオロジー(System Biology 、あるいはシステムズ・バイオロジーSystems Biology)が注目を集めている。これは、まず細胞の働き(時間変化や刺激に対する応答な ど)を現象としてとらえ、その現象を再現するしくみには、どのような機構が考えられる かを調べることで、生命現象の本質を探ろうとするアプローチであり、化学反応論の延長 線上にあるものである。本研究は、そこで開発されてきた反応速度式の記述法を、反応機 構が未知である遺伝子の発現系に応用し、遺伝子発現の分子機構をブラックボックスとし たまま、遺伝子間の制御関係を記述する連立微分方程式を、計算機により自動的に導出し ようとするものである[1]。
 一般的に化学反応は、熱力学に基づいた質量作用則にしたがって、その速度を記述する ことができる。濃度が二倍になれば、反応が進むのも二倍の速さ、ということである。こ れは厳密で正確に記述できる一方で、化学反応の形式(反応式)が完全に分かっていない と記述できないため、いまだ未知の部分のが多く、かつ既知であっても非常に複雑な生体 内の化学反応を記述し、シミュレーションなどをするのには向いていない。そこで生体内 反応の基礎である様々な形式の酵素反応については、ミカエリス-メンテン式をはじめとす る簡素なモデル(近似式)が開発されて、広く用いられてきた。そして、酵素反応を含む 一般的な生体内反応を統一的に表現できるモデルとして、S-system[1]が開発された。Ssystem は反応機構に寄らず同じ形式であるため、計算機での扱いが容易で、反応形式が未 知の系でも記述できるという利点がある。
 DNA microarrayにより、数千から数万個の遺伝子の発現量の時間発展が追えるように なってきたことから、本研究ではこれをターゲットとして、観察された時間発展から遺伝 子間の相互作用の有無を自動的に抽出することを目的として、時系列データからのネット ワーク構造の推定を行う計算機アルゴリズムを開発している。生体内の様々なネットワー クはスケールフリー性を持つことから遺伝子ネットワークにもそれを仮定し、また最適化 アルゴリズムに遺伝的アルゴリズムを用いることで、推定を行う。
上:S-systemの定義、右上:シミュレーションによる時系列データ、右下:データから推定されたネットワーク [1] S. Kikuchi, D. Tominaga, M. Arita, K. Takahashi, M. Tomita, "Dynamic modeling of genetic networks using genetic algorithm and S-system", Bioinformatics, 19, 5, 643-650, 2003.
[2] M. A. Savageau, Biochemical System Analysis. A Study of Function and Design in Molecular Biology, Addiso-Wesley, Reading, M.A., USA, 1976.
[3] J. Podani, Z.N. Oltvai, H. Jeong, B.Tombor, A.-L. Barabasi, E. Szathmary, "Comparable system-level organization of Archaea and Eukaryotes", Nature Genetics, 29, 54-56, 2001.

著書・論文
Kikuchi S, Tominaga D, Arita M, Takahashi K, Tomita M. "Dynamic modeling of genetic networks using genetic algorithm and S-system", Bioinformatics, 19(5), 643-650, 2003

Kadota, K., Tominaga, D., Akiyama, Y., and Takahashi, K., Detecting outlying samples in microarray data: A critical assessment of the effect of outliers on sample classification, Chem-Bio Informatics J., 3(1), 30-45, 2003.

Daisuke TOMINAGA, Katsutoshi TAKAHASHI, Nonlinear Numerical Optimization Algorithm Using System Dynamics, International Symposium on Biochemical System Theory 2002, Averoy, Norway

富永大介、高橋勝利「生体内反応系のための確率的非線形実数最適化法」、第9回MPSシンポジウム --進化的計算シンポジウム2002-

富永大介 「遺伝子ネットワークのモデリングのための多次元非線形数値最適化手法の開発」産総研生命情報科学研究センター人材養成コース設立1周年シンポジウム「21世紀生命情報科学の飛翔−お台場から世界に向けて−」

富永大介 "Nonlinear Numerical Optimization Method for Gene Regulatory Networks" 産業技術総合研究所国際シンポジウム Bioinformatics in Post-Genomic Era

富永大介 「並列計算環境を用いた細胞内生体反応ネットワークの構造推定」 ゲノムひろば in 福岡 「ゲノム研究勢揃い」2002

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