分子設計チーム　－研究チーム

（独）産業技術総合研究所生命情報科学研究センター（CBRC）は、平成19年3月31日をもって終了いたしました。CBRCの活動を発展させ、より統合化された実用技術を開発することを目的に、生命情報工学研究センターが平成19年4月1日に設立されました。
生命情報工学研究センターホームページ： http://www.cbrc.jp/

バイオインフォマティクス分野で
活躍できる技術者の育成

計算機を用いたタンパク質立体構造の理論的研究と創薬研究への応用に取組んでいます。具体的には、創薬標的タンパク質分子モデリング法の開発、分子動力学計算法によるフォールディング解析、タンパク質立体構造に基づくリガンド結合予測やケモインフォマティクス技術を融合したバーチャルスクリーニングを展開しています。また、生命情報科学技術者養成コースを通じて、創薬インフォマティクスの人材養成にも取り組んでいます。

最近の主要な研究テーマ

標的タンパク質のモデリング
GPCRファミリーやTyrosine Kinaseファミリーについて、比較モデリング法と分子動力学計算法を中心に、標的タンパク質構造ごとに特化した分子モデリングを行っている。例えば、GPCRは7本の膜貫通へリックスを持つ標的タンパク質であるが、へリックス間の安定に存在するために必要なアミノ酸残基と、化合物を受容するために必要なアミノ酸残基を配列解析からある推定し、その結果を立体構造予測に反映させる戦略をとっている。分子モデリング実施例には、ヒスタミン受容体などが挙げられる。

化合物のドッキング
タンパク質と化合物間のドッキング計算法には、これまで多くの先行研究が報告され、利用可能なソフトウェアも提供されている。しかし、ドッキング計算の精度がタンパク質や化合物の種類に依存するなど、化合物結合候補構造探索と結合評価関数改善への課題が残っている。我々は、標的タンパク質立体構造を構築後、代表的な化合物（阻害剤等）を活性部位に対してドッキング計算し、化合物結合状態を評価する方法（CoLBA法）を開発している。CoLBA法とは、ドッキング計算によって得られた候補構造を相互作用エネルギーだけで一意に決定せず、複数の化合物間の結果を利用して、標的タンパク質との原子間接触プロファイルを相互比較しながらコンセンサスのある結合状態を決定するという特徴を持つ化合物結合予測法である。これにより相互作用エネルギーのみに一存しない、柔軟でかつ直感的なスクリーニングが実現しつつある。

アミロイド形成のシミュレーション
アミロイドはアルツハイマー病、パーキンソン氏病、BSEなどの患者に生じ、これら疾患の原因と考えられている。これまでの研究により、変性蛋白質がβ構造からなるひも状構造を作り、さらにこれがより合わさることによってアミロイドが形成されることがわかっているが、結晶化しにくいことや不溶性のために、X線結晶解析、NMRなどで詳細な構造を明らかにするのは難しい。そこで我々は水分子を計算に含めずに、水和効果を近似するGeneralized Bornエネルギーを用いることによって計算機シミュレーションを大幅に高速化させ、アミロイドの形成を再現させ、その過程を詳細に分析することに成功した。現在は、アルツハイマー病に関連するAβペプチドをはじめとする様々な疾患関連タンパク質のシミュレーション、それらに基づくアミロイド形成阻害薬の開発を進めている。