Developers -研究成果への道-

Vol.3:新パラダイム創造への基盤〜GPCR遺伝子の網羅的解析〜

諏訪 牧子
MISSION
"SEVENS"プロジェクト:GPCR遺伝子データベースの構築
MEMBERS
諏訪 牧子 : CBRC
小野 幸輝 : 情報数理研究所
インタビュー:2009年1月14日
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バイオインフォマティクスの専門家が集うCBRCだからこそできた研究。
実験研究者からの反響と今後の展望

諏訪を中心とするプロジェクトは、実験研究者達から一定の反響を得た。新規遺伝子を保有したことが発端となり、国内大手製薬企業や、ベンチャー企業との共同研究へと発展して行った。また、2003年の公開当時には「ほとんどアクセスがなかった」というSEVENSだが、現在では毎月数千件、時には1万件を超えるページ利用数があるという。国内外に目を向けると、既知のGPCRデータベースはすでに複数あるが、未知のGPCRを含めたすべての遺伝子情報を網羅的に収集し、ユーザーフレンドリーの観点から視覚化して利用可能にしているデータベースはSEVENS以外に類を見ない。ユーザインターフェースの工夫やリンク数なども含め、SEVENSの充実度は高い。GRIFFINへの評価も高く、製薬企業のGPCR遺伝子の研究者からは、よく利用している旨の連絡を受けることも多くなっている。

現在、SEVENSでは、ヒトのGPCR遺伝子だけでなく、他の生物種についても遺伝子情報を網羅している。「いったんプロトコルができれば、ヒト以外の生物種の解析も容易でした」。この成果を受けて、最近では日中共同のカイコゲノムプロジェクトへ参加することの要請も受けた。

SEVENS プロジェクトの中で、諏訪が興味を引かれたのは、GPCR遺伝子のゲノム上での配置で、これらには意外な偏りがあることが判明したという。「ヒトの場合、11番染色体に、GPCRの7,8割が集まっていました。これらの殆どは匂い分子の受容体(嗅覚受容体)です。位置の偏りというのは思っても見なかったことなので、興味深く感じました」。また、味覚、嗅覚、視覚など、五感に関わる受容体は、哺乳類の間であっても生物種ごとに大きく分布が異なることもわかってきた。

現在、諏訪が取り組んでいる新たなプロジェクトは、嗅覚システムの統合的理解を目指した研究だという。「匂い受容のメカニズムは、様々な匂い分子のブレンドによって、快、不快の感情や記憶に連動します。すでに私たちは、SEVENSを通じて、嗅覚受容体を全て手元に持っています。GRIFFINのプロトコルを改良すれば、様々な匂い分子に対する全嗅覚受容体の活性化シミュレーションが出来るはずです。これは快適に感じる環境を実現するような仕組みを考え出すきっかけになると思っています」と、諏訪は言う。

もちろん、SEVENSプロジェクトは今後も発展して行く。これまで長い時間をかけて蓄積した機能データを基に、実験研究者と本格的にタイアップして、GPCRが関与する、より高次な生命現象の解明につながる成果を出して行きたいと考えている。

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