バイオ分野の産業技術研究においては、生物の形態や個々の現象についての博物学的な知識を収集するだけではなく、生命現象のメカニズムを解き明かし、利用することが必要となります。
生命情報工学研究センターでは、ゲノム情報、生体高分子の構造と機能、細胞内ネットワークなどを総合的に解析し、産業応用に貢献できる技術を開発することを目指しています。
細胞内の生命現象の多くは、生体分子や化学物質の相互作用・反応とそのネットワークによって実現されていますが、その本質は生体における情報処理だと言っても過言ではありません。
それらを理解するためには、個々の分子の属性に基づくメカニズムの解明だけでなく、ゲノム情報、外界からの刺激などに基づき、どのように情報が伝達され、処理されるかを解明する必要があります。
産業応用を目指す産業技術総合研究所においては、生命現象の解明のみに終始すべきではありませんが、逆に生物データの既存技術による表面的な解析だけでは産業応用には結び付きません。
もちろん、複雑な生命現象の本格的な解明にはまだ長い時間が必要ですが、当研究センターでは、従来のバイオインフォマティクスと比べて、より工学的な視点からゲノム情報、生体分子の構造と機能、細胞内ネットワークなどの総合的な解析を行い、生命の情報処理メカニズムの理解に基づいた技術を開発し、産業応用に貢献することを目指しています。
そのための研究は、情報学的にも高いレベルでなければなりません。
当研究センターでは、ゲノム情報解析、分子情報解析、細胞情報解析の各分野で最先端の研究に取り組むだけでなく、高度な数理的手法の活用と大規模計算応用技術の開発を重視し、センター内外のソフトウェア/データベースを統合化した実用的な情報基盤の実現を目指しています。