CBRC設立の2001年、私は北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)の学生でした。 タンパク質における遺伝子発見アルゴリズムの開発、が当時の研究テーマです。 その研究をさらに進めるためにどうすればいいかと考えていたところ、JAISTで助手をされた後CBRCでチーム長になっておられた高橋先生から、「CBRCで研究をしてはどうか」というご提案を受け、参加を決意。 当時の指導教官だった小長谷先生のご理解もあって、いったん休学してCBRCに参加することになりました。
学生時代からポスドク時代までCBRCで過ごさせていただきました。 ポスドク時代のカーネル法の研究を契機にして、タンパク質遺伝子の発見からRNA遺伝子の発見へと研究対象は変わりましたが、遺伝子発見という研究テーマ自体は変わっていません。 現在は、ポスドク2名と、プロジェクトの共同研究者やスタッフ16名とともに、プロジェクト中心の研究を進めているところです。
いずれも、自分がやりたいと思うテーマに、自由に取り組ませて頂けたので、研究テーマの自由度という意味では、どちらも違いはないように思えます。 当時チーム長だった浅井先生からも「自由にやりなさい」という言葉を頂いておりました。 “やりたいことを、やればいい”というスタンスは、全体に共通する考え方だと思っています。
一方で、環境面ということに関しては激変しました。 JAISTは、石川県能美市の自然豊かな環境にあります。 近くを流れる手取川の清流を今も懐かしく思い出します。 その環境のおかげで、博士前期過程の2年間は大変有意義に過ごすことができました。 博士後期過程になると、自分をそれまでとは違った環境に置きたいという気持ちが強くなっていました。 CBRCは東京のど真ん中にあり、隣接するBIRCや、理化学研究所 横浜研究所、東京大学 医科学研究所、かずさDNA研究所、等、近くに最先端の研究を行っている機関も数多くあります。 これらの場所を訪問し、研究者同士の知識交換をしやすいというのは、自分が研究を進めていく上でのテンションを高めてくれるように感じました。
私の場合CBRCに来て、当時研究員だった津田さんと出会うことができて、随分多くのことを学ばせていただきました。 学生の間は、周辺の皆さんから色々な知識を得て成長していく期間。 そういった時期にCBRCという研究の現場にいることのメリットは大きいでしょう。
もちろん、ひとかどの研究者になれば、地方に腰を据えてじっくり取り組む、というやり方もあります。 ただ、同じ分野で活躍する第一線の研究者がすぐそばにいるということは、とても大きな刺激になります。 落ち着いた環境でじっくり研究するのと、競争は激しいけれども刺激的な環境で研究するのと、どちらをとるかは個人の性格によるところだと思いますが、双方の良さをわかった上で、自分の状況に合わせて研究環境を選んでいくことが大切だと思っています。
これまでの5年半は、ただただ「頑張るしかない」時期でした。 周りの皆さんから知識や刺激を頂きながら、自分の研究テーマを進めていくことに集中する時期、と言えばよいでしょうか。 現在もプロジェクトが進行中で、多数の共同研究者の皆さんと進めています。
この4月からは、チーム長という役務に就くことになりました。 そのため、仕事の内容が大きく変わってきています。 これまでは自分自身の面倒だけを見ていれば良かったのが、他の皆さんの面倒も見なくてはいけないからです。 CBRCは教育機関ではありませんので、学生が学位を取るのを支援するような指導/教育は不要です。 一方で、チームとしての研究、あるいはプロジェクトがうまく進むように、「研究者として、他の研究者の面倒を見る」ことは大切です。 こうした役務に就くには経験がまだ足りないので、不安を感じながらも頑張っているところですね。
バイオインフォマティクスの研究には、生物的な知識も、数理的な知識も、計算機の知識も必要になってきます。 それらのすべてに精通している方は、すぐに活躍できると思います。 しかし、そんな方はごく少数。 普通は、どれか一つの分野に“得意技”を持つのが精一杯ですよね。 でも、そこであきらめないでほしい。 「○○しかできないからダメ」と考えるのではなくて、「今は○○しかできないけれど、この知識を活かしながら新しいことにも挑戦して、自分の取り組む領域を広げていきたい」と考える気持ちが大切なのです。 自分がこれまで取り組んできた分野だけにしがみつくのではなく、常に新しいことにチャレンジしていく気持ちを持った方に、ぜひ参加してほしいと思っています。 また、そういった気持ちを持っているなら、CBRCは大きなチャンスを得られる場であると信じています。