もともと、日本や中国といった国と、そこで使われる言葉に興味を持っていました。 いつかは日本に行ってみたい、という希望は、学部生の頃から持っていましたね。 そんなわけで、当時取り組んでいた研究テーマとの関連もあり、修士課程の時に一回目の来日。 3年間、生活しました。 修士課程の修了後は、いったんアメリカに戻り、学位を修得。 その後も1999年〜2001年にかけて日本で研究を行うなどの活動をしてきました。 そして、二度目の日本滞在中に、前センター長の秋山氏と出会ったのが、CBRC参加の遠因です。
2001年からの2年間は、こちらも以前から興味を持っていた台湾で、ソフトウェア会社のエンジニアとして活動しました。 そこでのプロジェクトを終え、次の所属先を考えることになったとき、設立から3年目を迎えるCBRCを候補に挙げました。 再び来日し、セレクションを経て正規スタッフとして参加するようになったわけです。
大きく分けると、現在は3つの研究テーマを挙げ、並行して取り組んでいるところです。 まず、チームとして取り組んでいるのは「転写の制御」と「強発現遺伝子」の研究です。 前者は、プロモーターのゲノム上のモデルを認識するためのツールモデルを作る、という研究です。 後者は発現量を測定した後のフィールドワークが中心になります。 こうしたテーマを、約7名のチームスタッフと共に研究している状況です。
もう一つ、個人的に研究を続けているのは「タンパク質が細胞内のどの小器官に極在化するか」というテーマです。 こちらは数年前から取り組んでいるテーマで、私の研究対象の中では比較的新しい分野になります。
研究テーマには、継続的な取り組みを行っていくものと、新たな取り組みに挑戦するものの二つがあります。 新しいものを追いかけていくことも必要ですが、それまで積み上げてきた研究も大切。 継続するものと、新たなもののバランスを大事にしたいですね。
研究の進め方には、二つの方法があると思います。 一人で、一つのテーマにとことん集中し、細かい洞察を重ねてより深く研究していく、というのが一つの方法。 台湾の企業でエンジニアとして活動しているときは、この手法で仕事に取り組んでいました。
もう一つは、知識を持つ人間が数多く集まり、大量のデータを素早く解析していく、という取り組み方。 アプローチは広く、浅くなりますが、こうしたやり方が奏功する場合もあります。
CRBCでは、前者のような研究手法も取ることができますし、学際的に多くの研究者が集まっているので後者のやり方もできます。 いま私が取り組んでいるテーマは、後者の「多数で素早く」という研究手法が適している時期です。 多数の研究者が集まるCBRCだからこそできる手法だと言えるでしょう。
現在進めている研究は「数多くの情報を集めて解析し、予測モデルを立てる」というものです。 今は、研究に必要なデータがいくらでも手に入る時代。 発現データ、構造データ、ゲノムデータ……など、公開されているデータも多く、大量のデータが簡単に手に入ります。 では、こうしたデータをどう解析していくのが効率的か、と考えると、多くの研究者がそれぞれの“得意技”を出し合って共同で進めていくのが一番だという結論になります。
CBRCの場合、大量のデータを解析できるだけの計算機パワーもありますし、専門領域での研究を重ねてきた方も数多くいます。 たとえば、立体構造の予測や、ゲノム配列の解析といった分野で大きな成果を上げた方も所属している。 こうした方と協力することで、研究を効率よく、素早く進めることができるようになるわけです。 設備面での魅力と、学際的な研究が進められることの魅力と、双方あると言って良いでしょうね。
学部生や大学院生の方であれば、「基礎的な勉強をしっかりしておきましょう」ですね。 いったん研究機関に所属するようになると、基礎的な分野の勉強をする時間はなかなか作れなくなってくるもの。 しかし、研究を進めていく上では、こうした分野の知識は欠かせません。 生物や応用数学やコンピュータなど、自分の“得意技”にできるような分野を一つ決め、その分野の基礎的な勉強を十分にしておいてほしいと思います。 たとえば、コンピュータならAJAXよりもアルゴリズムやグラフ理論の基礎を身につけるようにする、などの基礎固めをしっかりしておくことがオススメですね。
バイオインフォマティクスという分野は、今後も有望だと思っています。 特に、医療の分野。 そこでは、さらなる成果が期待されています。 自分自身の“得意技”を持つ多くの方が集まって学際的な研究を進めることで、さらに成果が上がっていくでしょう。